こんにちは。
東京都品川区で主に業務用空調設備の修理・メンテナンスをしております空調電機工業株式会社です。
いよいよ6月になりました。大気の不安定な日もあり、豪雨や雷雨の時もありますが、梅雨に入る前の爽やかな空気を感じられるのもこの時期ならでは。晴れた日にはまぶしいくらいの日差しが降り注ぎますが、木陰に入ると風も心地よく、新緑やその先に見える青空はとてもきれいですね。
さて、4月から『運輸業界の2024年問題』や『建設業界の2024年問題』が注目を浴びていますが、それと並んで、『空調の2024年問題』もささやかれているのはご存知でしょうか。2024年、代替フロンの規制強化による冷凍空調機器への影響が注目されています。詳しく説明してまいりましょう。
≪ 目次 ≫
1.空調の2024年問題とは
2.冷媒規制の変遷
3.日本における規制強化の影響と対応策
4.第一種特定製品の管理者の役割
5.おまけ
~ エアコンクリーニングしてますか? ~
1. 空調の2024年問題とは
2024年、冷凍空調機器の冷媒(冷やすために必要な物質)として一般的な代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン)へ規制が強化されることとなりました(詳しくは次項でご説明します)。そのため、現在使っている冷媒の入手が困難となる事態が想定されており、にわかに『空調の2024年問題』と呼ばれています。
一般財団法人日本冷媒・環境保全機構等による『社会と暮らしを支える冷凍空調機器の冷凍サイクル推進会議』共同要望書によると、以下のような状況にあることを注意喚起しております。
「冷凍空調機器は社会と暮らしの重要なインフラです。
その血液である冷媒には主に代替フロンが使われています。
代替フロンは地球温暖化に大きな影響を与えます。その為、国際ルールに基づいて代替フロンの供給量は大きく削減され、特に修理時の充填用フロンの枯渇が心配されています。」
それでは、代替フロンが規制されるようになった背景について簡単にみていきましょう。
2. 冷媒規制の変遷
1874年頃冷凍機が開発されてから、主な冷媒はアンモニアやメチレンクロライドといった有毒な物質が使用されていました。そのような状況の中、1928年アメリカでフロン(R12:CFC(クロロフルオロカーボン))が開発、更に2年後の1930年、同じくアメリカで家庭用エアコンが開発されました。日本では、終戦後に家庭用クーラーやルームエアコンが登場し始めます。その後、1960年ころには世界的にもエアコンが普及し、人体に無害なフロンが爆発的に使用されるようになったのです。
一方、1974年、太陽から届く有害紫外線から地球上の生物を守る役割をしているオゾン層の破壊のメカニズムが発見され、フロン内の塩素も影響していることが分かりました。1985年には南極にオゾンホールが発見され、オゾン層保護への動きの高まりから、1989年、オゾン層破壊物質の生産・消費を規制する『モントリオール議定書』が発効されました。そして、これまで冷媒として使用されていたCFCやHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)といった特定フロンから塩素を取り除いた代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン)へと転換が進められていったのです。
ところが、代替フロンは二酸化炭素(CO2)と比べ2000~1万倍も強い温室効果を持つという特徴があるため、1997年に採択された京都議定書では、代替フロンが温室効果ガスに指定されました。そして2016年、モントリオール議定書に各国への代替フロンの段階的な生産・消費量の削減を義務付けた『キガリ改正』が採択されます。
日本は2024年以降、2011~2013年の平均比40%削減が求められています。さらに2029年以降になると70%、2034年には80%削減に強まり、最終的には85%まで削減しなくてはなりません。2050年までに稼働機器からの代替フロン排出ゼロを目指す為、今後、プロパンやアンモニア・炭化水素等のグリーン冷媒やR32と言われる特定不活性ガスやHFO(ハイドロフルオロオレフィン)といった低GWP(地球温暖化係数)冷媒を使用した製品へと転換が進んでいくと思われます。
3.日本における規制強化の影響と対応策
《フロンを回収している様子》
日本では、2001年に『フロン回収・破壊法』が制定され、業務用冷凍空調機器の整備時・廃棄時のフロン類の回収、回収されたフロン類の破壊等が進められてきました。しかし、代替フロンの急増・冷媒回収率の低迷・機器使用中の大規模漏えいの判明等の問題や代替フロンの世界的な規制への動きの変化からそれらを踏まえた対応が必要となってきました。これまでのフロン類の回収・破壊に加え、フロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策が取られるよう2013年法改正され(2015年施行)、名称も『フロン排出抑制法』と改められました。
しかし、その後も廃棄時のフロン類の回収率は低迷していた為、2019年、違反者に対する直接罰の導入など抜本的な対策を講じる法改正が行われます(2020年施行)。東京都は、専門知識を持った人材による「フロンGメン」を結成し、立ち入り検査を始めました。2020年度からの3年間、建物解体時のフロン回収を1万2000件調べ、違反があった38件が勧告されました。また、警視庁の捜査員がフロンを未回収のまま空調機器を破壊している現場を発見し、解体業者と機器を利用していた企業幹部を書類送検した事案もあります。このように、解体事業者が不適切な処理をすると、冷凍空調機器の利用企業も法令違反となり、社名を公表されることとなります。
フロン排出抑制法は、大気中へ代替フロンの放出を防ぐ温暖化対策であると同時に、“フロン切れ”による空調機器の運転停止対策でもあります。回収して再生したフロンは、キガリ改正の生産・消費量にカウントされないからです。つまり循環利用している代替フロンなら、規制強化後も旧式機器に充填できるということになります。
しかし、環境省によると2022年度の回収率は44%で、2020年の罰則の強化後でも回収率が半分に届いていないのが実情です。冷凍空調機器は機器ごとに使う冷媒が決まっています。現在のように回収率が低迷したままでは、将来、旧式の空調機器に冷媒を補充しようとしても、機器に対応した代替フロンがないという状態が訪れてしまうかもしれません。
また、代替フロンの大気放出は解体工事中ばかりではありません。使用中の冷凍空調機器の故障等による場合も考えられますので、フロン漏れの早期発見と対処を行わせるため、フロン排出抑制法では第一種特定製品管理者(次項で説明します)に業務用エアコン等の定期的な点検も義務付けています。さらに、第一種特定製品管理者は今後、グリーン冷媒等を使用した製品への転換を求められることとなります。一般的に業務用冷凍空調機器は修理しながら20~30年使用できることから、将来を見据えた機器選定が必要です。東京都は、2024年度予算案においてフロン対策が強化され、ノンフロン機器への転換に対する補助を実施しています。
4.第一種特定製品管理者の役割
さて、第一種特定製品管理者とは、誰の事でしょうか。
まず、第一種特定製品とは、以下のものを指します。
① 業務用エアコンディショナー
② 業務用冷蔵機器及び冷凍機器(冷蔵または冷凍の機能を有する自動販売機を含む)
そして、第一種特定製品管理者とは、
① 原則として第一種特定製品を所有している者
(法人として所有していれば、法人が管理者となる)
② リースやレンタル、テナント等の場合は、契約上、第一種特定製品の保守・修繕の責務を負う者
となります。
フロン排出抑制法において、第一種特定製品管理者がするべき事項は以下のとおりです。
① 機器の設置及び使用する環境の維持保全
② 機器の点検(簡易点検・定期点検)
③ フロン類漏えい発見時の措置
点検時に漏えいが発見された場合は、専門業者に修理を依頼し、漏えい個所の修理が完了したら冷媒の充填を行うよう徹底する。
④ 点検・整備に係る記録・保存
⑤ 算定漏えい量の報告を自治体に行う
このように言われても正直、何から手を付けて良いか分かりませんよね。
東京都では、フロン対策アドバイザーを派遣し、機器管理のアドバイスやフロン漏えい対策の提案を行っているようです。なお、弊社でもフロン排出抑制法対策をすでに複数の第一種特定製品管理者とおこなっており、ノウハウを持っております。また、第一種フロン類充填回収業者として、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、栃木県、福島県に登録しております。フロンの回収及びフロン対策について、気になる事がありましたらお気軽にお問合せ下さい。
今後、フロン排出抑制法の遵守の為、さらに厳しく規制されることが予想されます。「フロンGメン」や警察により、指摘を受けたり罰則が科せられたりしてから慌てないために、早めに対策をとることをお勧めします。
フロン排出抑制法につきましては、改めて別の回で詳しく解説いたします。
前述のように冷媒が環境に与える影響は大変大きいものであるにも関わらず、その認識が広まっていないことが問題です。環境に与える影響はすぐに起きるものではなく、長い間の蓄積によるものである為、実感が湧きづらいのは仕方ないのかもしれません。しかし、私たちの生活がエアコン等の冷媒を使用した機器とは切っても切れない状況にある以上、多少の負担をしてでも対応し、子や孫、さらに後世へ美しい地球を引き継いでいく使命があると思います。
5.おまけ
~ エアコンクリーニングしてますか? ~
《業務用エアコンをクリーニングしている様子》
梅雨入り間近で湿度が高く、日中も夏日を超える日が多くなってまいりました。既にエアコンを使用している事業所も多いと思います。外観はさほど汚れているようには見えない場合でも、フィルターや内部は思った以上に汚れています。特に内部はカビが発生している可能性が高いです。近年はお掃除機能付きのエアコンが販売されていますが、あくまでも今までのエアコンよりはカビが発生しにくい仕様になっているだけで、全くクリーニングをしなくて良いものではありません。内部がカビだらけの空調機を使用した場合、どういうことになるかはお察しの通り、空間にカビを大放出していることになります。つまり、その空間にいる人は、カビを吸い込んでいることになるのです。恐ろしいですね。常にエアコンを使用している場合はもちろん、冬場はエアコンを使用していない場合も1~2年に最低1回はクリーニングを行いましょう。弊社は、業務用空調機器のクリーニングやオーバーホールも行っております。その他、エアコンを使用中に気になる事がありましたら、気軽にお問合せ下さい。
きれいなエアコンを使用して職場空間を快適にし、作業効率も上げていきましょう!!