こんにちは。
東京都品川区で主に業務用空調設備の修理・メンテナンスをしております空調電機工業株式会社です。
8月に入り、真夏日を超え猛暑日となっている地域もあり、今年も昨年と同様、長期にわたって暑さが続く予報が出ています。暑さの厳しい毎日ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。エアコンは適切に利用できていますか?暑さが続くと、食欲の減退や運動不足から体調を崩しやすくなります。栄養のあるものを食べ、無理のない適度な運動と十分な睡眠をとるよう心がけましょう。そして、水分補給をお忘れなく。
さて今回は、前回のブログ(『空調の2024年問題』を知っていますか?)でお伝えしきれなかったフロン排出抑制法について、環境省の資料を基に業務用冷凍空調機器を使用している施設の管理者様向けにお話をしたいと思います。
《目次》
- フロン類とはどんなもの?
- フロン排出抑制法とは
- 第一種特定製品管理者とは
- 管理者に求められる役割
- 点検のタイミングと内容
- 修理・廃棄時の対応
- 違反するとどうなるの?
1.フロン類とはどんなもの?
フロン類とは、フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称です。CFC(クロロフルオロカーボン)、 HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン、通称:代替フロン)を フロン排出抑制法ではフロン類と呼んでいます。
これらは、化学的にきわめて安定した性質で扱いやすく、 人体に毒性が小さいといった性質から、エアコンや冷蔵庫などの冷媒用途をはじめ、断熱材等の発泡用途、半導体や精密部品の洗浄剤など様々な用途に活用されてきました。しかし近年では、オゾン層の破壊や地球温暖化に影響があることから国際的に使用を制限する動きとなっています。
※詳しくは前回のブログ(『空調の2024年問題』を知っていますか?)参照
図1 フロン類がオゾン層に与える影響
2.フロン排出抑制法とは
国際的な動きに合わせて、日本ではどのような対策がとられてきたのでしょうか。年表形式で簡単にまとめてみました。
1987年 モントリオール議定書が採択される←【国際的な動き】
1988年 『オゾン層保護法』成立
特定フロン及び代替フロンの製造・輸入等が規制されるようになる
2001年 『フロン回収・破壊法』成立
機器廃棄時、確実にフロンを回収し、破壊・再生されるよう規制される
2007年 『フロン回収・破壊法』改正
新たに違反者への罰則や工程管理の厳格化が導入された
2015年 『フロン排出抑制法』成立
10年以上4割弱で低迷していた廃棄時回収率向上のため、機器廃棄時に
ユーザーがフロン回収を行わない違反に対する直接罰の導入等、抜本的
な対策を講じる改正がおこなわれた。
図2 フロン排出抑制法の全体像 環境省ホームページより
3. 第一種特定製品管理者とは
さて、業務用冷凍空調機器を使用している施設の管理者は、図2において (3)第一種特定製品管理者に該当します。
第一種特定製品(以下、機器という)とは、冷媒としてフロン類が使用されている業務用の空調機器及び冷凍冷蔵機器を指します。そして、「第一種特定製品管理者」(以下、管理者という)とは、第一種特定製品の所有者となります(法人として所有していれば法人が管理者)。ただし、契約書等の書面において保守・修繕の責務を所有者以外が負うこととされているリース契約等の場合は、その者が管理者となります。
4. 管理者に求められる役割
フロン排出抑制法における管理者に求められる役割は何でしょうか。
まず、管理をしている施設において、使用している機器について把握する必要があります。その為に、以下の準備をおこないましょう。
① 台数及び設置場所の把握
② 機器の種類と機器の大きさの把握
③ 機器リストの作成
次に、管理者がフロン類の漏えい防止に取り組むために遵守しなければいけない点をまとめると以下の様になります。
① 管理する機器の設置環境・使用環境の維持保全。
<適切な設置場所とは>
・機器に損傷をもたらすような振動源を周囲に設置しない。
・機器の周囲に点検・修理のために必要な作業空間を確保
する。
・機器周辺の清掃を行う。
※フロン類を使用していない機器へと移行するための対策(実施時期計画や予算確保等)を計画的に進めていくことが求められています。
②簡易点検・定期点検の実施。
③漏えいや故障等が確認された場合、修理を行うまでのフロン類の充塡の原則禁止。
可能な限り速やかに漏えい個所の特定や必要な処置を実施する必要があります。
④点検・整備の記録作成・保存
点検の記録は、機器を廃棄するためのフロン類の引渡しが完了した日から3年間保存しなければいけません。
また、機器整備の際に、整備業者等の求めに応じて当該記録を開示できるようにしましょう。
もし、一定量以上フロン類を漏えいさせた場合、算定漏えい量等を国に報告することが求められます(法人単位)。更に、国はその算定漏えい量等を公表します。
5.点検のタイミングと内容
管理者は、機器からフロンが漏えいしていないか定期的に監視していく必要があります。その為に行うのが『点検』です。点検には、【簡易点検】と【定期点検】があります。
① 【簡易点検】
《点検内容》
- 冷凍冷蔵倉庫や冷凍冷蔵シーケース等の冷蔵機器及び冷凍機器の庫内温度
- 製品からの異音がないか(安全で容易に点検できる場合)
- 製品外観 (配管含む)の損傷はないか(安全で容易に目視できる場合)
- 腐食、錆び、油にじみ、熱交換器の霜付き等の冷媒漏えいの徴候の有無(安全で容易に目視ができる場合)
※基礎情報(設置場所・実施者等)以外では、「実施日」、「実施の有無」のみ記載
《点検頻度》
3か月に1回以上
《点検実施者》
実施者の具体的な制限なし。
② 【定期点検】
《点検内容》
簡易点検の項目に加え、直接法や間接法による専門的な冷媒
漏えいの検査
- 直接法:発泡液法、漏えい検知機を用いた方法、蛍光剤法
- 間接法:チェックシートなどを用いて稼働中の機器の運転値が日常値と ずれていないか確認し、漏れの有無を診断する方法
※直接法、間接法による点検に関する技術的内容をまとめた
文献としては、一般社団法人日本冷凍空調設備工業連合会
が発行する「業務用冷凍空調機器フルオロカーボン漏えい
点検・修理ガイドライン(JRC GL01)」を参照。
《点検頻度》
- 7.5kW 以上の冷凍冷蔵機器 :1年に1回以上
- 50kW 以上の空調機器 :1年に1回以上
- 7.5kW以上50kW 未満の空調機器 :3年に1回以上
《点検実施者》
専門点検の方法について十分な知見を有する者が自ら行うか、
立ち会う必要がある(社外・社内を問わない)。
当社は、ビル管理者様や企業様よりご依頼を受け、簡易点検及び定期点検をおこなっている実績があります。簡易点検や定期点検についてのお困り事や定期点検だけでも専門業者にお願いしたいといったご要望など、気になる事がありましたらお問合せ下さい。
6.修理・廃棄時の対応
【写真】フロン類を回収している様子
点検時または使用時にフロン類の漏えいや故障を発見した際には、速やかに専門業者に修理を依頼しましょう。修理後、機器にフロン類を充填する必要がある場合は、「第一種フロン類充填回収業者」(以下、充填回収業者という)に委託しなければなりません。充填回収業者は、機器の設置されている事業所が所在する都道府県の登録を受ける必要ありますので、依頼する際には登録している業者か確認しましょう。管理者の事業所が所在する都道府県において登録簿を閲覧することができますので、そちらでの確認もできます。
また、フロン類が充填されている特定製品を廃棄する際(下取りに出して廃棄、または部品取り後に廃棄する場合も含む)には、充填回収業者に直接引き渡すか、設備業者等を介して充填回収業者に引き渡す必要があります。その際は、行程管理票(フロン版のマニフェスト)を使用します。下記は管理者から直接充填回収業者にフロン回収を依頼する場合の流れです。
管理者
↓ ・A票 回収依頼書(控)兼委託確認書 交付
充填回収業者
↓ ・E票 委託確認書兼引取証明書 記入
↓ ・再生証明書、破壊証明書 回付
(再生業者及び破壊業者 交付)
管理者
・A票、E票、再生証明書または破壊証明書 保管(3年間)
〔4.管理者の求められる役割〕でも記載されているとおり、点検・修理・廃棄等をおこなった際は、その記録を残しておく必要があります(点検整備記録簿は、機器廃棄後3年間保管)。注意しましょう。
現在、当社では、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・栃木県・福島県で第一種フロン類充填回収業者の登録をしております。フロン類の充填・回収・廃棄についてもお気軽にお問合せ下さい。
7.違反するとどうなるの?
フロン排出抑制法の義務に違反した管理者は、以下の罰則(直接罰)が科せられます。
- フロン類をみだりに放出した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- フロン算定漏えい量の未報告・虚偽報告の場合、10万円以下の過料
- フロン類の引渡しを行わずに廃棄した場合、50万円以下の罰金
- 廃棄時にフロン行程管理票の交付や保存(3年間)を怠った場合、30万円以下の罰金
東京都は警視庁と連携し、実際に検挙実績もあります。
今後、廃棄時のフロン回収率が向上せず、フロン類の段階的削減の数値目標が達成できないとなると、さらに取り締まりを強めたり、罰則を科したりするかもしれません。
そのような状況になって慌てないためにも、簡易点検や定期点検を行い、整備や廃棄の記録やフロン行程管理票の保管を日頃からきちんと行っておきましょう。
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フロン排出抑制法について、なんとなく理解することができましたでしょうか。
フロン類は、LPガスの様に燃えたり毒性が強く人体にすぐに影響を与えたりする気体ではない為、地球環境に影響を与えていると分かっていても、経済活動において優先順位が後回しになってしまっています。しかし、近年の世界的な異常気象を見ると、環境破壊の速度は速く、環境保全を世界レベルで行うことが必要で、緊急を要しています。そのうちやればいいと悠長なことを言っている場合ではありません。水と空気があり、多くの生き物が生息するこの素晴らしい地球を未来に残すためにも、今からできることを始めましょう。
環境省フロン排出抑制法ポータルサイトに様々な資料がありますのでご参照ください。
https://www.env.go.jp/earth/furon/